2022年2月8日、トヨタ系列販売会社が不正車検を行った問題で、愛知県警はトヨタ系販売店の元副店長ら10人を道路運送車両法違反(不正車検)などの容疑で書類送検しました。
不正車検を行ったとして愛知県警は8日、トヨタ自動車系列の販売会社「ネッツトヨタ愛知」(名古屋市)を道路運送車両法違反の疑いで、同社の販売店元副店長ら元自動車検査員の男10人(28~50歳)を同法違反や虚偽有印公文書作成・同行使などの疑いで、名古屋地検豊橋支部に書類送検した。
引用 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20220209-OYT1T50137/
このような、トヨタ系列販売会社の不正車検はなぜ行われてしまったのでしょうか?
私は、5年ほど前まで某ディーラー系自動車販売店で10年間勤務しており、自動車検査員として、実際に車検の検査の業務をしていましたので、その時の経験をもとになぜ今回この様な不正車検が行われてしまったのか解説します。
不正車検とは?
不正車検とは道路運送車両法で定められている、自動車の車検整備及び検査の際に必要な点検や整備を一部行わずに車検に合格させる行為です。
今回問題になったケースの場合、以下の様な不正検査が行われていたようです。
4 違反の概要
(1) 検査作業と整備作業を分業化していない。
(2) 法令の規定を遵守する体制でない。
(3) 事業者は、保安基準不適合状態で保安基準適合証等を交付した。
(4) 事業者は、点検及び検査の一部を実施せず保安基準適合証等を交付した。
(5) 指定整備記録簿に虚偽の記載をした。
(6) 自動車検査員は、検査の一部を実施していないにもかかわらず保安基準に適合する旨を証明
した。
(7) 自動車検査員は、保安基準不適合状態であるにもかかわらず保安基準に適合する旨を証明した。
引用元 国土交通省 中部運輸支局 プレスリリース 不正車検を行った指定自動車整備事業の取消し処分
自動車検査員とは、本来「みなし公務員」とされており自動車を安全に運行させるために、国に代わって道路運送車両法で定められた車検の基準に達しているか否かを検査する重大な責任を背負っています。
その自動車検査員が、本来は車検の基準に達していない車両を車検に合格させたり、車検の検査の一部を行わずに車検に合格させることは、絶対に許されることではありません。
なぜトヨタ系列販売会社で不正車検が行われてしまったのか?
今回、トヨタ系列販売会社で不正車検が行われたことが大きなニュースとして取り上げられていましたが、実際にはトヨタ系列販売会社だけの問題ではなく、他の販売会社や整備工場でも同様の事件が起きる可能性があります。実際に、トヨタ系列販売会社以外にも毎年数件の販売会社や整備工場が不正車検を行って、国土交通省から行政処分を受けるケースがあります。
では、なぜこの様な不正車検が行われるのでしょうか?
今回の不正車検の要因となったのは、自動車整備士や自動車検査員の慢性的な人手不足や売上ノルマと車検の入庫台数を重視したスピード車検です。
実際に私が某ディーラー系自動車販売店で検査員をしていた時も、1日の車検の入庫台数がかなり多く、人員も不足していましたので、遅くまで残業するのが当たり前の体力的にも厳しい状況でした。
自動車整備士は、近年の少子高齢化や若者の車離れの影響で若い人で整備士を希望する人がどんどん減っており、専門知識や資格も必要になってくる為、他業界から転職して整備士になるケースはほとんどないため、慢性的な人手不足になっています。
そうすると、どうしても車一台あたりに掛けられる時間が少なくなってしまう為、今回のような不正車検や作業ミスが起こりやすくなってしまいます。
それでも、車検台数のノルマ達成や売り上げノルマの達成のために、車検の作業を効率化して車検の作業時間を短くするスピード車検が多くの整備工場で行われるようになりました。
スピード車検とは? スピード車検の危険性
スピード車検とは、従来であれば車検作業の場合車を1日程度預かって作業していたものを、効率化して1時間から早いところでは30分で終わらせてしまう車検です。
私が検査員をしていた時には、1台当たり普通に検査して平均30分程度は時間がかかっていましたので、様々な部分を効率化したり、複数人で作業していると思いますが、作業時間が短ければ試運転や確認作業の時間がほとんどありませんので、本当に車検に通すだけになってしまいます。
スピード車検は、お店にとっては1日に作業できる車検台数が増えたり、代車を貸さなくても良くなったりしますので、多くのメリットがありますが。お客様の立場からすると時間が早く終わるというだけであまりメリットがありません。
スピード車検だとどうしても限られた時間の中で作業しますので、作業ミスが起こりやすく、不具合箇所の見落としにも繋がります。
最近の車は故障が少なくなったとはいえ、2年に一度の車検なので、時間をかけてしっかりと車を整備してもらって、悪い部品や必要な消耗部品は交換してもらった方が安心して車を運転することが出来ます。
自分の車が不正車検されない為にはどうすれば良いか?
今回のような、不正車検はトヨタ系列販売会社だけではなく、他の整備工場やディーラー系自動車販売店でも起こる可能性があります。
では、自分の車が不正車検されない為にはどうすれば良いでしょうか?車検を受ける時の注意点を紹介します。
- 急ぎでない限り、スピード車検は避けてじっくり時間をかけてしっかり整備してもらう。
- 事前に運転していて、気になる事や普段と違う音がしたら、それを整備士にしっかり伝える。車検の短い時間では確認できない異音や不具合があります。(例:朝方エンジンをかけるとキュルキュル音がする、雨の時にブレーキを踏むとキーと音がするなど)
- 代車が十分に用意出来なかったり、予約がなかなか取れないお店は人手不足の可能性がありますので注意。
- 複数の整備工場で事前に相見積もりをして、料金の相場や必要な交換部品を把握して一番信頼できる整備工場にお願いする。
以上の4つのポイントに注意して、2年に一度の車検をしっかりと行い、安心のカーライフを過ごしましょう。
コメント